
1994年のアパルトヘイト撤廃後の南アフリカは、人種融和と黒人の生活向上を目指して新しい国づくりが開始され、プラチナ、金など世界でも有数の鉱物資源国として年率約5%の経済成長を遂げてきました。しかし、結局、鉱物資源からの収益に頼る経済は、富の集中を招き、貧富の格差を拡大させてきました。一国の中に「南北」格差が凝縮するような構造はアパルトヘイト時代と変わっておらず、この結果、経済成長にもかかわらずMDGs(※1)のほとんどの指標やHDI(※2)で数値が後退し、1996年以降、子どもの死亡率が上昇し続けています。(写真:旧白人居住区)
南アフリカは出稼ぎ社会で現在でも職を求めて人口が都市部に流入し続けていますが、一方で黒人間の非就業率が60%と高くなっています。こうした中、南アフリカでは特に現金への依存度が高く、近隣住民との相互扶助も希薄な都市部において、物価高騰にともない貧困層の置かれる状況がより困難になっており、失業、ドラッグ・アルコール、犯罪、HIV/エイズ、食料不足、孤児など直面する社会的課題を多く抱えたままです。
本事業では、特に生活状況の厳しい南アフリカの都市部において人びとが自ら生活を改善していく力をつけていくことを目指し、外部からの投入の少ない、身近な自然資源を活用した持続的農業の研修を提供していきます。
※1 MDGs:国連ミレニアム開発目標。2000年に開催された国連サミットで21世紀の国際社会の目標として、国連の役割に関する方向性を提示。貧困と飢餓の撲滅、教育へのアクセス、乳幼児死亡率、感染症対策等8つの分野を課題としてあげ、2015年までに当時設定した目標を達成するとした。
※2 HDI:人間開発指数。国ごとの人びとの生活の質や発展度合いを示す指標。出生時平均余命、就学率等の教育、GDPの3つの指数の平均から数字が出される。いずれも国連開発計画(UNDP)が毎年発表。
【プロジェクトの内容】
ジョハネスバーグ市近郊の旧黒人居住地区ソウェトの中学校の敷地を借りて、地域住民を対象に身近な自然資源を使った持続的農業研修を実施している。2010年度からは家庭菜園づくりにも力を入れている。
(1) 地域内の中学校の敷地を利用した持続的農業の研修

本事業では2009~11年度の中で持続的・環境保全型農業について基礎技術計画・栽培を学び広げていけるようにすることを考えており、2010年度は自分たちで採種・苗作りをすることと、計画に基づいた栽培の2点に注力してきました。(写真:研修の様子)

これに対し、前者は問題なくできるようになっている一方で、菜園の中に余って傷ませる野菜が見られることもあるなど、後者の難しさが確認されています。これを受けて研修参加者からは、2011年度は栽培スペースを半減させ、その中できちんと管理し収量を向上させること、および野菜を適切に使用(自家消費・販売など)していくことが目標としてかかげられました。また、野菜の利用について参加者が負担を感じず継続的に記録していけるような方法を検討、具体的な生活の変化について実感できるような仕組みを作っていきます。(2010年は豆がたくさん取れた。食料と種として使う。)
また、JVCのこれまでの活動の経験より、持続的農業の実施において、経験交流から学ぶことによる効果・インパクトが大きいことが確認されているため2011年度も引き続き実施します。
(2)研修実施中学校における特にサポートの必要な子どもの支援体制づくり
(1)の参加者が自分たちの活動の一環として、学校給食への野菜寄付を通じた子どもの支援を希望しており、JVCとしても活動を通じて将来を担う若い世代をサポートすることに意義を感じています。これを受けて2010年度は学校関係者を交えて話し合い、サポートが必要な子どもに対して給食支援が届くような仕組みをつくることを目指していましたが、様々な事情により学校側の本件に対する優先順位が低くなったこと、またそれに対しJVCからいいタイミングで働きかけられなかったことから、2010年度にはほとんど進捗が見られませんでした。2011年度も引き続き学校側に働きかけますが、学校側の優先順位ともかかわるためJVCの活動の優先順位としては(1)、(3)より落とします。現在は参加者が余った野菜を不定期に寄付をしている状況です。
(3)活動振返り、評価
2012年2月にこれまでの活動の成果、課題を振り返り、そこから教訓・将来への提言を得ることを目的として評価を実施します。これを受けて2012年度以降の活動の方向性について検討していきます。
<支援対象者>
(1)2009、2010年度研修参加者および参加者より教えられて菜園づくりを実践している人 約10名
(2)ジフネレニ中学校教員および生徒約700名のうち特にサポートが必要な生徒 約60名
(3)本事業に関心を持って新たに研修を希望してきた住民 随時