背景
ベトナム政府は経済発展を最優先に、海外投資の誘致を進めたことで、都市部と山岳地域の経済的格差が広がっています。
プロジェクト対象地域であるホアビン省タンラック郡はハノイから南西約110kmに位置しています。人口の70%がムオン民族、その約85%が農業を営み、イネ・トウモロコシ・サトウキビを主に生産しています。同地域に住むムオン民族は狭い農地に加え、技術的問題などから、コメの自給率は30~50%にとどまっています。政府の貧困削減政策により改良種と化学肥料などの支援はされていますが、その特徴や弊害についての情報は乏しく、病害虫の被害に遭い不作に陥るなどの問題が生じています。
また、ムオン民族の暮らしを支えてきた自然資源の減少も深刻な問題です。1970年代から断続的に行われた商業目的による森林伐採や、焼畑農業のほか、人口増加などにより森林や野生動物が減少しました。さらに、著しい土壌流出、土壌の質の低下、耕地面積の減少により、作物の収穫高が低下しています。
こうした状況から、ムオン民族の人々が傾斜地を利用しながら安定した暮らしを続けていくために食料自給の向上と土壌流出の防止に取り組む必要があります。
プロジェクトの内容
JVCは1999年から、村人自身が村の課題を話し合い、改善策を作る場である「村づくり委員会」を設立し、運営のサポートをしてきた。2007年から活動地を3村(バクソン村、ナムソン村、ディックザオ村)に絞り、村づくり委員会を中心としたアプローチから、より世帯の意見をくみ取れるよう村人と直接取組む活動へ転換した。このうち、バクソン村、ナムソン村の全12集落で村人の状況に即した生活改善に向け、活動計画を立案するための調査を行った。

今後も安心して暮らしを続けていくために、土留めの効果がある苗木の植林などを行い、土壌流出を防ぎ、地域の自然資源を活かした持続的な農業の実践を進め、食料を安定的に確保していく活動を実施していく。
◆食料の安定確保
JVCは環境に負荷が少なく、かつ在来の農法に近く、村人が応用しやすい3つの稲作改善方法(アヒル水稲同時作、魚水稲同時作、幼苗1本植え)を3村で紹介している。この中で村人同士の経験交流会を定期的に開催するほか、経験交流会の模様や技術の紹介、病害虫に関する情報を掲載したニュースレターを発行している。また、野菜の安定確保の活動を希望している32世帯の家庭菜園を調査し、乾季に育つ野菜がないことや病虫害の被害が問題になっている状況を把握。栽培技術の研修を開催し、乾季の野菜不足を改善するために各世帯に3種類の種(ホウレンソウ、春菊、パクチョイ、チンゲンサイ、紅かぶ、小かぶ、大根の中から3種類)を支援してきた。さらに、休閑地を有効に活用することで家畜の飼料として利用しているほか、土壌改善につながるクローバーやレンゲ、六条麦などの種を配布してきた。
◆土壌流出防止のための活動
バクソン村とナムソン村の荒廃地約10ヘクタールに、土留めの効果があるソアンとラット(いずれもセンダン科)の苗木を植林してきた。今後は、これまでに植林した苗木がしっかりと根付くように生育状態を観察していく。特に土壌流出が激しいバクソン村ハイチェン集落では、土砂崩れによって農地を失った10世帯が独自に管理規則を設けて植林を行っている。
また、傾斜地利用の改善を図るため、等高線農業を実施し、傾斜がきつい地域にマメ科の木を植えるほか、傾斜が緩やかな土地は段々畑にし、果樹やマメ科の植物などを植え、土壌流出を防止する土地デザインを作成してきた。2007年にバクソン村とナムソン村で一部の世帯がすでに実践してきたので、今後は他の世帯が実践世帯から学べるように経験交流会を開催していく。
また、プロジェクト終了後も実践世帯を中心に持続的な自然資源を利用できるよう、集落の青年団や環境クラブの小中学生が中心となって植生調査を実施する。