住民参加型農村開発
プロジェクト終了報告
2009.9.18記載
【プロジェクト全体の成果】
土壌流出防止のための活動では、等高線農業を実践する32世帯のうち、81%にあたる26世帯が事前に立案した計画に沿って実施しており、他の世帯が学べるモデルとなっている。自然資源に関するワークショップの参加者もそれぞれの畑で試行錯誤しながら行っており、集落会議などを通じて他の村人と情報を共有している。こうした点から、村人の中に傾斜地を持続的に利用していくことの重要性を理解し、実践している人々が現れていると言える。また、植林では、2村5集落で苗畑を作り、利用規則を作成した。このことから、今後も継続的に集落で荒廃地への植林が行われていくことが期待できる。

食糧確保のための活動では、稲作技術の改善(アヒル・魚水稲同時作、幼苗一本植え)において、特にアヒル水稲同時作と幼苗一本植えを実践する世帯が急増した。また、村人同士の学びあいや情報共有が集落会議を通じて行われている。ナムソン村で立ち上げられた「病害虫予防隊」も集落会議を通じて病害虫の情報を他の村人に伝えており、積極的に活動が行われている。ディックザオ村でもこの方法を応用したいという意見が出されていることから、村同士の交流が促進され、多くの村人が病害虫についての知識を深めていくことが期待される。
家庭菜園の改善、休閑地利用、飼料加工技術については試験的な要素が強く、実践世帯数が急増するまでには至っていないものの、核となる村人が栽培技術や加工技術を習得しており、小規模ながら継続して行われている。また、評価活動を通じて、家庭菜園の改善や休閑地利用で栽培してきた大麦やカブなどに関心を持つ村人が多く、種の支援を希望する人が多いことがわかった。一部の村人は実践した村人から種を分けてもらっており、今後も村人間の種交換を通じて、ゆっくりと活動が広がっていくことが予想される。

村人同士の経験交流・地方行政との連携では、各村の村作り委員会はそれぞれの村で抱える問題を解決するために話し合いを重ね、適宜、改善を行ってきた。プロジェクト管理委員会においても各村を技術的・資金的にサポートする体制作りを積極的に検討し、一部はすでに実行している。こうしたことから、今後も村人の試みや活動を村作り委員会や地方行政スタッフが理解し、支援が行われていくことが期待できる。
また、フィリピンを訪問した地方行政スタッフが中心となり、アヒル水稲同時作について本事業の対象村だけではなく、ホアビン省全体に伝えていこうとする流れができつつある。ベトナムでは、国際NGOが実施した活動の結果を元に、地方行政スタッフが吟味し政策の一環として取り入れていこうとする事例はあまりないため、今後、農村開発事業を実施している国際NGOにとって良い事例となることが期待される。
【今後の展望】
本事業により、村の若い人たちが自分自身の村を好きになってもらうことができ、村に残って取り組んでいる。たいへん喜ばしいことであると同時に、村の強さにつながるものであると思われる。
これまで村は食糧の自給自足を目指してきたが、今後は、それに加えて現金収入を得る農業をベースとした産業づくりが望まれる。より多くの若手が自分の生まれ育った村に残りたいと思える村づくりを進めていくことが望ましい。
スタッフの声
この2年間を振り返ってみると、最初、事業を軌道にのせるまでに苦労した。稲作の3つの方法(アヒル水稲同時作、魚水稲同時作、幼苗一本植え)は現地の村人にとっては、まったく目新しいものというわけではなかったが、実際に体験してもらうまでは理解を得ることが難しかった。メリットとリスクをしっかりと説明した上で、どのくらいの農家が取り組んでくれるかが心配であった。また、ともに実施するなかでも、天候の変化が常に気になったり、台風で魚が流されたりということもあった。
しかし、2年間の事業を終えるにあたり、村人から、「自分たちで研修ができるから大丈夫」と言ってもらい、大変うれしく感じている。本事業は終了をするが、今後は若手が集落を引っ張っていく核になって、さらに発展した農業に取り組んでいくことが望まれる。
一食を食べないで献金してくれているということ自体がベトナムの人に対して強烈なメッセージになっている。現地の人びとは苦労の体験を重ねており、日本のような飽食の国の人びとが一食を抜いて献金をし、痛みを分かち合おうとしていることの意味の重要性を私たち以上に深く受け止めてくれていた。日本の皆さんの思いは現地にしっかりと届いていると感じた。
伊能まゆ(ベトナム事務局代表)