支援プロジェクト


ミャンマー 東バゴー地域における読書推進活動

一つの校舎を複数の学年で仕切って学習している

【背景】
ミャンマーでは、2011年の民政移管後、年間約7%といった高い経済成長を続けています。また教育の重要性も強調され、教育予算の増加を含めた抜本的な教育改革を進めてきています。しかしながら、教育へのアクセス、質、地域格差といった課題が依然として残されています。
アクセスに関しては、小学校に入学出来ている児童は100%近いものの、卒業できる児童は約7割、また中学校に入学できる児童は6割未満、高校入学においては約3割に留まっています 。初・中等教育への普遍的なアクセスは、国際的な持続可能な開発目標(SDGs)の一つにも設定されていますが、全児童が教育を受ける状況に至るには厳しい現状です。
また質の面では、暗記教育からの転換に時間を要しています。これまでの軍事政権下で、進級試験を合格することを目標にした暗記中心の教育が行われていました。現在教育省は、カリキュラムや教科書の改訂、教員養成研修の制度改革等を中心に、教育の質の改善を目指し、教員中心型の指導や暗記中心の学習方法から、国際的にも推奨されている子ども中心の学習環境への変革を図り始めました。しかし、長年にわたり根付いた教授・学習方法を切り替えることは容易ではありません。暗記教育のみでは、子どもたちは楽しんで学習できず、創造的・クリティカル思考、問題解決スキルなど将来をより良く生きていく力を養うことが困難です。
更には、教育の質に地域格差もみられます。ヤンゴンなどの都市には国際支援や投資は集中していますが、その他の地域では開発が遅れ、都市と農村地帯の格差は広がるばかりです。 本事業対象の東バゴー地域は、ヤンゴンから車で2~5時間程度離れており、開発から取り残されている地域の一つです。インフラ整備が遅れ、学校施設や教材も乏しく、子どもたちが楽しんで上記スキルの習得を含め学習に親しめる環境は整っていません。
 
【プロジェクトの内容】

このようなミャンマーの現在の教育状況を受け、弊会は移動図書館活動を通じて子どもたちに読書の機会を提供するプロジェクトを立ち上げました。現在ミャンマーのほとんどの公立学校には図書室はなく、教員室の一角に図書コーナーが設置されている程度です。更に本棚には鍵がかけられていて、日常的に使われていない様子がうかがえます。また、ミャンマーには、絵本や児童図書がほとんどありません。蔵書も古いものが多く、日本で当たり前に読まれているような子ども向けの図書はマンガ以外皆無に等しい状況です。本活動は、公共図書館から図書室のない近隣の小学校に向けた移動図書館活動を通じて、子どもたちの読書推進を行います。

校舎の一角に設置された図書スペース

校舎の一角に設置された図書スペース

弊会は読書の機会を提供することが、上記の様な子どもたちの置かれている環境の改善に必要不可欠だと考えます。子どもたちは、絵本を中心とした良質な図書を読むことで、21世紀型スキルとも呼ばれる想像力、思考力またコミュニケーション能力等を養いながら学習への効果も得ることができます。また、本を通じて様々な世界を知りながら異文化理解や平和への思考を助長するとともに、読書を通じて楽しむこと自体が子どもの成長過程においては必須です。図書館活動の重要性は、ミャンマー国家顧問や情報省大臣にも認識され、彼らも読書推進活動を推奨しています。
 
完成した三輪オートバイ

完成した三輪オートバイ

弊会は、2014年から2017年に本国バゴー地域の西側であるピー県とタヤワディ県において、公共図書館を対象に児童サービス改善事業及び、読書推進活動を行ってきました。そのうちの一つが移動図書館活動で、当活動は、対象になった公共図書館が児童図書を配備した三輪車オートバイで該当地域を定期的に回り子どもたちの読書を推進する活動です。この活動は、同国政府より多大な支持を受けています。
 
●対象地域

対象地域は、ヤンゴンから北に2~5時間ほど上がった、バゴー地域東バゴーの2県になります。

ミャンマー全土、バゴー地域拡大

 

●事業目的

本事業は、対象地域の移動図書館対象校において、公共図書館と学校図書館が連携して児童の読書推進のため機会を提供し、読書活動が普及することを目的にしています。

●活動内容詳細
  1. 公共図書館から公立学校に移動図書館活動を行う。
    各公共図書館において年間15の対象校を選び、移動図書館活動(読み聞かせプログラム及び貸出しサービス)を行う。
     
  2. 公共図書館員の図書館活動に関する知識・技能を育成する。
    対象公共図書館に図書研修日程(3日間/年)を行う。研修で習得した知識・技能を活用して実践に活かせるよう、四半期合同会議(1日×4回/年)を通じSVAがモニタリングを実施しながらフォローアップする。
     
  3. 学校教員の図書館活動に関する知識・技能を育成する。
    移動図書館活動の様子

    移動図書館活動の様子

    公共図書館員より、移動図書館活動で訪問した際に対象学校教員向けに指導を行う。
     
  4. 良質な本を提供する。
    国内外からの図書の購入分(日本から50冊/館、ミャンマー国内で購入100冊/館、タイで購入100冊/館)と、ミャンマー国内の児童図書出版活動にて出版された図書(4タイトル/年)を配架する。

     

●支援対象者
1.東バゴー地域内の公共図書館14館(バゴー県8館+タウングー県6館)
1年次 バゴー県8館
2年次 タウングー県6館
3年次 上記14館のフォローアップ
2.東バゴー地域内の公立学校210校(15校×14館)

 
●支援対象者数概算
直接受益者総計 約85,302人


【内訳】

   公共図書館員 3人×14館=42人
   公立図書館利用者 250人×12ヶ月×14館=42,000人
   移動図書館活動対象校教員・校長 6人×210校=1,260人
   移動図書館活動対象校児童数 200人×210校=42,000人

間接受益者総計 2,894,140人


【内訳】

    バゴー県人口:1,770,785人
    タウングー県人口:1,123,355人

 

【これまでの成果】
本事業を通して、期待される成果は下記4つあります。
 
1.公共図書館から公立学校に移動図書館活動が定期的に行われている。
初めに、対象8公共図書館において、移動図書館活動先の対象となる各15公立学校の選定を行いました。貸出し用の児童図書リストや壁掛け図書バッグの製作や必要備品の購入、また移動図書館に活用する三輪オートバイのデザインと組み立ても終えた後、全対象図書館に提供しました。その後学校の新年度開始時期である6月に、当移動図書館サービス(読み聞かせプログラム及び貸出しサービス)を開始することが出来ました。対象の公立学校からの反応は、子どもたちは初めて聞く読み聞かせに集中し、初めて見る絵本に夢中になり、終了の合図まで何冊もの本に没頭していました。学校長そして教員からの感心も高く、貸出しサービスの開始前に行った指導の場でも読み聞かせの練習など積極的に行っていました。
 
2.公共図書館員の図書館活動に関する知識・技能が育成されている。
図書活動に必要な知識・技能を伝達するための研修プログラムを組み、3日間の研修を5月にバゴー県立図書館にて行いました。主な研修内容は、公共図書館及び図書館員の役割、児童サービスの概念、読み聞かせやおはなしの意義等の講義説明に加え、絵本やパネルシアターの読み聞かせの練習や、移動図書館活動に実際に必要な準備プロセスや各種フォーマットの記入の仕方等、実践も交えたものとなりました。また本研修にあたり、2014年よりSVA支援の下活動しているバゴー地域西側(ピー県及びタヤワディ県)の図書館の職員らが参加し、過去の経験に基づいて技術や経験の共有等が研修中積極的に行われました。
また、対象公共図書館員らと共に四半期会議を4月に行い、活動詳細やスケジュールの説明、配架する本の翻訳シールの貼り方の説明等を行いました。
 
3.学校教員の図書館活動に関する知識・技能が育成されている。
6月より開始している移動図書館活動の巡回の際に、各学校に当活動の意義を説明しながら活動する様子が見られています。更なる知識・技能を伝達出来る様、継続したSVAよりのフォローが必要です。
 
4.良質な本が提供されている。
国内外からの図書の選定や購入、輸送を終え、全図書館に配架を終えました。ミャンマーで出版する4タイトルについては、現在作成中であり、完成後、出版、配架予定です。日本からの図書に関しては、現地ミャンマー語の翻訳シール貼付作業を、立正佼成会の皆様に行って頂いたため、無事に対象図書館に図書を届けることが出来ました。
 
以上、これまでの成果を基に、今後も、SVAからのフォローアップモニタリングや四半期会議を通じて、学校への継続した移動図書館活動が行われる予定です。また本活動に対し、情報省情報広報局バゴー地域統括局長からは、非常に高い評価と継続した協力体制を約束頂いており、今後の活動への高い期待が寄せられています。
 

 

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